(写真:夫と小太郎)  書いてる人:ライラ


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喜びの壁

MASTERキートン (4) (ビッグコミックス)

以前にも勘違いしていましたが、また間違えてました。
「奇跡の壁」とか思ってました。人に紹介するならちゃんと調べろって話です(汗)

これを機にちゃんとしたタイトルとストーリーをメモついでにここでご紹介。

浦澤直樹の名作、漫画「Masterキートン」の一節です。
多分一生忘れられない話の一つです。
・・・の、くせにタイトル一つまともに覚えちゃいませんでしたが。









スコットランド・ガロウェイ地方のフィオン村にやってくるキートン。

「聖フランチェスコはご存知ですよね。1182年、アッシジの豪商に生まれ、放蕩三昧の末、ある日、神の声を聞いたあの人物です。フィオン村の伝説によれば、彼はこの地を訪ね、修道院を建てた。つい3年前まで存続していました。最後にいたのはライアンという修道士で亡くなるまでいたそうです。ライアン師のいたころは、すでにこの修道院は「喜びの壁」を除いて崩壊していました。彼はその近くに掘っ立て小屋を建て、瞑想の日々を送っていました。」

「フィオン村の保存運動はどう進展しているんですか?」
マックストン石油会社の重役がキートンに質問した。

「運動の提唱者はドナルド・ペインという男です。この壁は石油会社の排気ガスでひどく傷んでいると主張するんです。」

「それで、遺跡の鑑定結果は」

「確かに壁は排気ガスのためにひどく傷んでいます。しかし、当の保存運動については眉唾です。大騒ぎしているのはペイン氏ただ一人。村人は無関心です。」

そのペインは4年前までは製油所の技師をやっていたが、妻が死んだことで会社を退職していた。そしてペインはこう主張する。

「キートンさん、今年の5月3日に奇跡が起こるんだ。ライアン師がそういってたんだ。」



壁の前で話し合うペインとキートン。
「これを喜びの壁と呼んだのもライアン師だ。聖フランチェスコの伝説も彼が教えてくれたんだ。人間は一人一人が孤島だとライアン師は言った。」

「4年前、俺は女房を病気で亡くした。彼女が死んだら生きていけないと思った。
しかし一晩、悲しみに暮れた後、俺は平静を取り戻していた。普通に食事し、眠り、時には笑いさえした。結局、俺は俺自身が死ぬこと以上に悲しいことなどないと知ったんだ。

「俺は自分の冷酷さを責め、浴びるほど酒を飲んで、ここでライアン師と会った」


ライアン師はペインに言う。
「なぜ悩むんだね。人間は一生、他人の心など分かるはずもないし、人の死を本当に悲しむこともできはしない」

「でも、家内は」

「あなたが奥さんを愛していたのは本当のことだ。それは、あなたの中にあるからだ。
でも奥さんがあなたを愛していたかは、本当は分からない。人間は一生、自分という宇宙から出られはしない。いや、人間だけではない。鳥や獣もそうかもしれない」

「神に仕える身のあなたが、そんなことを…。
真実だとしても、それは悲しいことですね」

「しかし人間は、この広い宇宙よりもずっと広大な宇宙を持っている。
あるいは私の言ったことが幻想で、人間の心は通じ合っているのかもしれないよ」

「どうしたら、本当のことが分かるのでしょうか」

「聖フランチェスコのように奇跡を見るしかないな」

「答えにもならない」

「奇跡は起こるよ。この私ですら、見たことがあるんだ。
そう、4年後の5月3日、再びこの場所で」


ライアン師はその翌年死んだとキートンに言うペイン。
「だから俺は一人でこの壁を守る決意をした。」

「じゃあ、あなたも明日の晩、何が起こるか知らないんですね。」

「ああ」




そして、5月3日の晩、壁の前に現れるペインとキートン。
「俺たちはどうしてこの壁に魅かれるんだろう」

「不思議ですよね。この壁一枚で北海の厳しさからこの丘を隔絶している。
スコットランドはまだ冬のような寒さなのに、初夏のように心地よい。今晩、奇跡が起こることもすんなりと信じられますね」

そこに家出少年のテッドが現れる。
彼は友人に裏切られたことがショックで家出をしていた。
「結局、アイツと僕は他人だったんだ。あんな理不尽なことをするんだもの」

「一度くらいの理不尽は許すんだ。それが友達だろ。
今、彼を許せなかったら、一生誰も許せなくなるよ」

「僕は一人ぽっちだ」

「それは素晴らしい悟りだ。それを知ってれば、誰だって許せる」


そして夜のとばりはおりていく。叫ぶテッド。
「周りをみてください!」

周りはありとあらゆる動物が集まっていた。そして壁にオーロラのようなものが降りかかる。

「聖フランチェスコの伝説、知ってますか?彼は鳥や獣までに心を感じ、洗礼を施した。やがてはすべての動物が説教を聴きに集まった、ということです。
孤独に疲れたライアン師は、放浪の果てに、この地を訪れ、この自然のいたずら、いや奇跡を見たんですね」

「俺たちは一人で生き、一人で死んでいくが、この一瞬、この場にいる生き物だけは自分の宇宙を抜け出して、同じことを感じている」


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by XXhousewife | 2009-02-05 14:55 | 日記・雑記etc.

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